「法定雇用率が2.7%に引き上げられた」というニュースは見たけれど、結局自社は対象になるのか、対象だとして何人採用すればいいのか——具体的な数字で理解できていない、という人事・経営者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、2026年7月から適用されている新しい法定雇用率について、「従業員50人の会社」を例に、必要な雇用人数と労働時間の考え方を具体的な数字で整理します。
法定雇用率が2.7%に引き上げられた背景
障害者雇用促進法に基づき、民間企業には、従業員数に応じて一定割合以上の障害のある方を雇用する「法定雇用率」が定められています。この法定雇用率は段階的に引き上げが続いており、2026年7月から**2.5%→2.7%**に引き上げられました。
これにあわせて、雇用義務の対象となる企業の範囲も広がっています。
対象企業はどのレベルから?
今回の引き上げにより、**雇用義務の対象となる企業の範囲は「従業員37.5人以上」**に拡大されました。
これまで「従業員40人未満」だったために対象外だった企業も、今回の改正で新たに義務の対象に含まれることになります。「うちは規模が小さいから関係ない」と思っていた企業ほど、注意が必要なタイミングです。
また、今後の法定雇用率が上がることを想定し、現時点では対象ではなくとも、“転ばぬ先の杖”として、早めに動いておくことも大切です。
必要な雇用人数はどう計算する?
法定雇用障害者数は、次の式で計算します。
必要な雇用人数 = 常用労働者数 × 2.7%(端数は切り捨て)
言葉だけだとイメージが湧きにくいと思いますので、具体例で計算してみましょう。
【具体例】従業員50人の会社の場合
常用労働者数が50人の会社を例にすると、計算は次のようになります。
50人 × 2.7% = 1.35人 → 小数点以下を切り捨て → 1人
つまり、従業員50人の会社であれば、障がいのある方を1人雇用する義務がある、ということになります。
「たった1人か」と思われるかもしれませんが、この「1人」を実際に採用し、定着させることが決して簡単ではない、というのは、多くの企業がすでに実感されている通りです。
週何時間働いてもらえばいい?労働時間のカウント方法
もう1つ重要なのが、「何時間働いてもらえば1人としてカウントされるのか」という点です。雇用率の計算上、労働時間によってカウントの仕方が変わります。
(分かりやすいように原則(ベース)を示します)
| 週の所定労働時間 | カウント数 |
| 30時間以上(フルタイム相当) | 1人としてカウント |
| 20時間以上30時間未満(短時間勤務) | 0.5人としてカウント |
| 20時間未満 | 原則カウント対象外 |
先ほどの「従業員50人の会社で1人必要」というケースで考えると、選択肢は主に2つあります。
- 週30時間以上働ける方を1名雇用する
- 週20〜30時間の短時間勤務の方を2名雇用する(0.5人×2名=1人分)
フルタイムでの勤務が難しい特性をお持ちの方でも、短時間勤務を組み合わせることで、法定雇用率の達成につなげられる、という点は意外と知られていないポイントです。
もし法定雇用率を達成できなかったら、どうなるのか
「必要な人数は分かったが、達成できなかった場合にどうなるのか」も気になるところだと思います。未達成の場合に生じるリスクは、主に段階的に3つあります。
①障害者雇用納付金(対象は常用労働者100人超の企業)
法定雇用率を下回っている企業のうち、常用労働者数が100人を超える企業は、不足している人数に応じて「障害者雇用納付金」を納める義務があります。
納付金額 = 不足人数 × 月額5万円 × 不足していた月数
例えば、不足が1人の状態が1年間続いた場合、年間60万円の納付金が発生する計算です。
なお、常用労働者数が100人以下の企業は、この納付金の対象外です。先ほど例に挙げた「従業員50人の会社」であれば、納付金の対象にはなりません。ただし、納付金の対象外だからといって、雇用義務そのものがなくなるわけではない点に注意が必要です。
②ハローワークによる行政指導・雇入れ計画作成命令
納付金の対象になるかどうかにかかわらず、法定雇用率を著しく下回っている企業や、長期間にわたって未達成が続いている企業に対しては、ハローワークから行政指導が行われます。改善が見られない場合は、「障害者の雇入れに関する計画」の作成を命じられることもあります。
100人以下の企業であっても、この行政指導の対象になり得るため、「納付金がないから大丈夫」というわけではありません。
③改善が見られない場合の企業名公表
行政指導を受けてもなお改善が見られない企業については、最終的に障害者雇用促進法に基づき、厚生労働大臣による企業名の公表が行われる可能性があります。実際に企業名が公表されれば、採用活動やブランドイメージへの影響は避けられません。
「納付金を払えば済む」わけではない
納付金を納めたとしても、法定雇用率を達成する義務そのものがなくなるわけではありません。納付金はあくまで行政上の負担金であり、行政指導や企業名公表のリスクを回避できるものではない、という点は誤解されやすいポイントです。根本的な解決には、実際に雇用を実現し、定着させることが欠かせません。
数字は分かった。でも、ここからが本当の悩みどころ
ここまでの計算はシンプルですが、実際に人事担当者が直面するのは、この先の実務です。
- 週30時間、あるいは20時間の勤務条件に合う方に、どうやって出会うか
- 自社のどの業務なら、その労働時間・特性で任せられるか
- 採用してからどう定着してもらうか
- 短時間勤務の方を2名雇用する場合、シフトや業務分担をどう設計するか
法定雇用率の「数字」を満たすことと、実際にその方が長く働き続けられる環境を作ることの間には、大きな距離があります。特に今回の改正で新たに対象となった従業員37.5人〜50人規模の企業では、そもそも障がい者雇用の経験がなく、何から手をつけていいか分からない、というケースが多く見られます。
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※本記事の内容は2026年8月時点の公開情報に基づいています。従業員数の算定方法(除外率や短時間勤務者の扱いなど)や、納付金・行政指導の具体的な運用は企業の業種・雇用形態・状況により異なる場合があります。正確な内容については、厚生労働省の発表資料をご確認いただくか、無料相談にてお問い合わせください。

