「法定雇用率が未達成で、行政指導のリスクが心配……」 「採用担当は他の業務も抱えていて、障がい者雇用にまで手が回らない……」
そんな悩みを抱え、いわゆる「農園型」「代行(代理)型」の障がい者雇用サービスの資料を取り寄せている人事・CSR担当者の方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、農園型・代行(代理)ビジネスは短期的に法定雇用率の数字だけは満たせても、企業に障がい者雇用のノウハウが一切残らないという構造的な弱点を抱えています。この記事では、農園型・代行ビジネスの仕組みと、今なぜ「問題」として注目されているのか、そして自社に合った選び方を整理します。
農園型・代行ビジネスとは何か
農園型雇用は、企業が自社の遠隔地(多くは地方)に開設された農園などの施設と契約し、そこで障がいのある方を雇用する仕組みです。企業側の従業員として籍は置かれますが、実際の業務は農作業や軽作業が中心で、本来の職場(本社やオフィス、工場など)で働くことはほとんどありません。
似た仕組みに「代行(代理)型」(オフィス型を含む)もあり、こちらも実際の配属先とは切り離された場所・業務で障がい者を雇用し、企業側は法定雇用率としてカウントする対価を支払う、という点は共通しています。
企業側から見ると、
- 採用活動の手間がかからない
- 定着支援や職場環境整備のノウハウがなくても始められる
- 短期間で法定雇用率を達成できる
というメリットがあり、特に人事担当者が少ない企業や、障がい者雇用の経験がない企業にとっては魅力的に映ります。
なぜ今、代行(代理)ビジネスが「問題」として注目されているのか
近年、こうした農園型・代行(代理)型のサービスについて、厚生労働省をはじめとした行政や労働政策の専門家から問題提起がなされています。背景にあるのは、障害者雇用促進法が本来目指す「障がいのある方が地域社会の中で、その能力を活かして働くこと」という理念と、農園型・代行(代理)ビジネスの実態との乖離です。
法定雇用率の「数字」は満たされていても、障がいのある方が実際の職場から切り離され、企業の本来の事業活動に関わる機会を得られていない、という状況が各所で指摘されるようになりました。今後、こうしたサービスの運用実態に対して、行政のガイドラインや制度上の取り扱いが見直される可能性も議論されています。
農園型・代行(代理)ビジネスの3つのリスク
1. 本人のキャリア形成が断絶する
実際の職場に配属されないため、障がいのある方本人が「自社の一員として成長する」機会がほとんどありません。単純作業の反復にとどまり、スキルアップやキャリア形成につながりにくい構造です。
2. 事業者の撤退・契約終了リスク
農園型・代行(代理)サービスは、契約している事業者の経営状況や方針によって、サービス自体が終了・縮小されるケースがあります。その場合、企業は突然、法定雇用率を大きく下回る事態に直面し、短期間での対応を迫られることになります。
3. 社内に雇用ノウハウが一切蓄積されない
代行(代理)サービスに依存している間は、社内の誰も「障がいのある方をどう採用し、どう定着させ、どう業務を任せるか」を経験しません。将来的に自社雇用へ切り替えようとしたときや、行政の運用が変わったときに、ゼロからのスタートを強いられます。
それでも代行(代理)サービスを検討してしまう理由
ここまで課題を挙げましたが、それでも多くの企業が代行サービスを選ぶ背景には、切実な事情があります。
- 人事担当者の人手が足りず、障がい者雇用に割ける時間がない
- 過去に採用してもすぐに離職してしまい、自社での雇用に自信を失っている
- 現場から「対応できる自信がない」という声が上がり、社内の理解を得られていない
こうした事情自体は決して珍しいものではなく、多くの企業が同じ悩みを抱えています。大切なのは「代行(代理)に頼るしかない」と諦める前に、自社での雇用・定着を実現する別の選択肢を知ることです。
自社に合うか判断するためのチェックリスト
以下の項目に当てはまる数が多いほど、代行(代理)ビジネスではなく自社雇用・定着型の支援サービスが向いている可能性が高いといえます。
- 障がいのある方にも自社の事業の一員として働いてほしいと考えている
- 将来的に自社内に雇用ノウハウを残したいと考えている
- 法定雇用率の「数字」だけでなく、企業のブランドや人的資本経営の観点でも取り組みたい
- 現場の理解や体制づくりに時間をかけてでも、本質的な解決を目指したい
- コストは代行サービスより高くても、投資として捉えられる
まとめ
農園型・代行(代理)ビジネスは「今すぐ法定雇用率を満たしたい」というニーズには応えられますが、本人のキャリア形成、事業継続性、社内ノウハウの蓄積という点で構造的な課題を抱えています。今後の制度動向を踏まえても、自社で雇用し、定着させ、戦力化していく体制づくりは、多くの企業にとって避けて通れないテーマになっていくと考えられます。
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